P--811 P--812 P--813 #1如来二種廻向文 如来二種廻向文 無量寿経優婆提舎願生偈曰 云何廻向 不捨一切苦悩衆生 心常作願 廻向為首得成就 大悲心 故[文] この本願力の廻向をもて 如来の廻向に二種あり 一には往相の廻向 二には還相の廻向なり 往相の廻向 につきて 真実の行業あり 真実の信心あり 真実の証果あり 真実の行業といふは 諸仏称名の悲願にあ らわれたり 称名の悲願 大無量寿経にのたまはく 設我得仏 十方世界無量諸仏 不悉咨嗟称我名者 不取正覚[文] 真実信心といふは 念仏往生の悲願にあらわれたり 信楽の悲願 大経にのたまはく 設我得仏 十方衆生 至心信楽欲生我国 乃至十念 若不生者 不取正覚 唯除五逆誹謗正法[文] 真実証果といふは 必至滅度の悲願にあらわれたり 証果の悲願 大経にのたまはく 設我得仏 国中人天 不住定聚 必至滅度者 不取正覚[文] これらの本誓悲願を 選択本願とまふすなり この必至滅度の大願をおこしたまひて この真実信楽をえた P--814 らむ人は すなわち正定聚のくらゐに住せしめむとちかひたまへり 同本異訳の無量寿如来会にのたまはく 若我成仏 国中有情 若不決定 成等正覚 証大涅槃者 不取菩提[文] この悲願は すなわち 真実信楽をえたる人は決定して等正覚にならしめむとちかひたまへりとなり 等正 覚は すなわち正定聚のくらゐなり 等正覚とまふすは 補処の弥勒菩薩とおなしからしめむとちかひたま へるなり これらの選択本願は 法蔵菩薩の不思議の弘誓なり しかれは真実信心の念仏者は 大経には次 如弥勒とのたまへり これらの大誓願を 往相の廻向とまふすとみえたり 弥勒菩薩とおなしといへりと  龍舒浄土文にはあらわせり 二 還相廻向といふは 浄土論曰 以本願力廻向故是名出第五門と これはこれ還相の廻向なり この こゝろは 一生補処の大願にあらわれたり 大慈大悲誓願は 大経にのたまはく 設我得仏 他方仏土諸菩薩衆 来生我国 究竟必至一生補処 除其本願自在所化 為衆生故  被弘誓鎧 積累徳本度脱一切 遊諸仏国 修菩薩行 供養十方諸仏如来 開化恒沙無量衆生 使立 無上正真之道 超出常倫 諸地之行現前 修習普賢之徳 若不爾者 不取正覚[文] これは如来の還相廻向の御ちかひなり これは他力の還相の廻向なれは 自利利他ともに行者の願楽にあら す 法蔵菩薩の誓願なり 他力には義なきをもて義とすと 大師聖人はおほせことありき よくゝゝこの選 P--815 択悲願をこゝろえたまふへし      [正嘉元年{丁巳}閏三月廿一日 書写之] P--816